成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度の二つから構成されています 1)

[2020年3月更新]

1.法定後見制度 3)

 法定後見制度は、ある人(本人)の判断能力が精神上の障害により不十分な場合(認知症、知的障害、精神障害、疾病・事故等による脳機能障害など) に、後見人等を選任し、その者が本人の財産管理、生活のまわりの行為などを法律的に支援・保護するための制度です。

①成年後見

本人が、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況となっている場合。例えば、本人が1人で日常生活を送ることができない、1人で財産管理が できないなどの場合です。

成年後見人には、本人の財産に関する法律行為について包括的な代理権を有します。本人に代わって銀行で預金を出し入れしたり、不動産を売買すること ができます(自宅は別途、家裁の許可が必要です)。

また、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、本人の法律行為を取り消すことができます。以前は、成年後見が付されると選挙権を失っていま したが、現在は改正されています。

②保佐

精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が著しく不十分となっている場合。日常的な買物程度は1人でできるが、金銭の貸し借りや不動産の売買な ど重要な行為は1人ではできないなどの場合です。

保佐人は、本人の生活や財産に影響を与える一定の範囲の事項について同意権を有します。これらの事項については、本人だけで行為をすることができ ず、保佐人の同意が必要になります。保佐人はその行為を取り消すこともできます。

保佐人には、家庭裁判所の審判により代理権を付与してもらうこともできます。例えば、施設への入所契約、預貯金の手続など。ケースに応じて必要とな る範囲の代理権を設定します。ただし、代理権の付与にあたっては、本人の同意が必要です。

③補助

精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分となっている場合。本人が1人で重要な財産行為を適切に行えるか不安があり、だれかに支援して もらいたいような、判断能力が十分ではない場合に利用される制度です。補助開始の審判をするには、本人の同意が必要です。

補助人は、家庭裁判所の審判により定められた範囲(保佐の事項で列挙された行為のうちの一部)で同意権を有します。取消権があるのは保佐と同様で す。たとえば、10万円以上の売買契約については補助人の同意が必要、などと設定します。

また、補助人には、保佐人と同様、家庭裁判所の審判により代理権を付与してもらうことができます。これらの同意権ないし代理権を補助人に付与するに は、いずれも本人の同意が必要です。

後見制度の体系

図 1 後見制度の体系 1,2)

2.任意後見制度 3)

本人が契約締結に必要な判断能力を有している間に、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における後見事務について、任意後見人に対して一定の 範囲で代理権を付与する旨の任意後見契約を締結し、これにより、その後、実際に精神上の障害により判断能力が不十分な状況になったときに、家庭裁判所 によって選任された任意後見監督人の監督の下で、任意後見人による保護・支援を受けることができる制度です。

任意後見監督人が選任されたときから任意後見契約の効力が生ずる旨の約定を付した契約を締結します。事務の内容は、本人受任者で合意し、公正証書に よる契約書を、公証役場で作成します。ただし、同意権取消権はなく、代理権のみです。

本人判断能力低下後、候補者が家庭裁判所に任意後見監督人選任申立で、初めて法的な任意後見制度が発動します。任意後見監督人選任前後ともに,家庭 裁判所の許可等の要件を満たせば契約の解除が可能です。法定後見と同様、本人または任意後見人の死亡によって終了します。

法廷後見制度と任意後見制度の比較

図 2 法廷後見制度と任意後見制度の比較 1,2)

3.成年後見人等の業務 3)

(1)財産管理

文字通り、本人の各種財産を適切に管理することです。

 例えば、①預貯金の出し入れ、②現金・有価証券の保管、③不動産の売買、④不動産の賃貸借、地代・家賃の支払い・受領、⑤貴金属など高価な動産の 保管、⑥年金などの給付金の請求や受領、保険料・公共料金の支払い、⑦遺産分割の協議、遺留分減殺請求、⑧訴訟行為、裁判上・裁判外の和解など。

 初回報告、定期報告の際には、財産目録や収支予定表を作成して、家庭裁判所に報告することが必要となります。

 初回報告以後は、日常生活費などは家計簿を作成し、領収書チェックなどすることが多いが、どこまで行うかはケースバイケースです。

 居住用不動産の処分には法律上、裁判所の許可が別途必要とされています。重要な財産の処分に際しては、家裁に確認しながら適宜行います。 

(2)本人の意思決定の尊重と身上配慮義務

身上配慮(≒身上保護)とは、生活や療養看護(医療・介護・福祉)のことをいう。判断能力は不十分であっても、可能な限りの本人の意思尊重が必要と なります。後見人等自身が介助を行うのでなく、福祉サービス等を利用して組み立てができれば問題はありません。

 ①住居の確保に関する事項、

 ②施設の入退所、処遇の監視・異議申立に関する事項、

 ③介護・生活の維持に関する事項、

 ④医療に関する事項、

 ⑤教育・リハビリに関する事項、

 ⑥役所などへの異議申立てなどの公法上の行為、

 ⑦アドヴォカシー(本人の利益の代弁。一般的見守り活動・・・ただし、契約などの法律行為の権限行使に伴う注意義務の範囲に限る)

これらの事項に付随する契約締結、締結した契約の履行、費用の支払い、契約解除のチェック(財産管理との不可分性)。いずれにせよ、本人と定期的に 面会して、よりよい支援を目指すことが大切です。

成年後見人の分類

図 3 成年後見人の分類 1,2)

参考文献

1.NPO法人地域ケア政策ネットワーク、市民後見人育成テキスト, 2013.3

2.口語六法全書 口語民法、自由国民社、pp.5-26、2013

引用文献

3.弁護士 向川純平、専門職後見人と被後見人の実践報告、「個人後見の実践例から学ぶ研修会その1」研修会冊子、NPO法人成年後見センターかけ はし WAM助成事業 研修会、pp.49-55、2019.8